36日目 薬局実務実習と国家試験
薬局実務実習も8週目に入ります。
これまでの7週間で、薬局で実践するチェックポイントSBOsもすべて最低1回は触れられたと思います。
残りの4週間の実務実習は、薬局の現場で起こる事象に基づいてさらに繰り返し体験することで実習生の能力の「質」を伸ばしていくことになります。
繰り返しになりますが、実習生が実務実習で身に付ける能力は以下の通りです。
薬局実務実習で身に付ける臨床対応能力
(1)薬学臨床の基礎
(2)処方箋に基づく調剤
(3)薬物療法の実践
(4)チーム医療への参画
(5)地域の保健・医療・福祉への参画
大きな項目としてこの5つの臨床対応能力を身に付けることとなります。
調剤室での調剤から、受付でのカウンター実習、服薬指導、在宅業務など一通り参加・体験していろいろな能力が身に付いてきたと思います。
残りの4週間は、この身に付けた能力をさらに伸ばしていくために少し難易度の高い業務を体験していくことになります。
これまでのスケジュールでは、主に(1)~(3)を中心に実習が進んでいましたので今後は、薬局の外での業務である(4)、(5)も意識しながら実習を進めていくことになります。
また、十分な知識が必要な「服薬指導」も見学と簡単な処方箋に対するものにとどまっていますので、これからの4週間は「服薬指導」にも積極的に参加していただくこととなります。
36日目(8週目第1日)
チェックポイントSBOs
SBOs920;処方箋の記載事項(医薬品名、分量、用法・用量等)が適切であるか
確認できる。(知識・技能)
【第97回薬剤師国家試験】
問326
保険調剤における処方内容の疑義照会に関する記述のうち、正しいのはどれか。
1つ選べ。
1 医師には自らが交付した処方せんに関して、薬剤師からの疑義照会に対応する
義務がある。
2 処方せんに不備があっても薬剤師として明確に判断できることは、疑義照会
する必要はない。
3 処方せんに疑義があっても患者に確認して解消された場合には、疑義照会
する必要はない。
4 処方された医薬品の用法が記載されていない場合は、添付文書の用法に合わせ
て投薬するので疑義照会の必要はない。
5 疑義照会により処方内容が変更になった場合は、医療機関に処方せんの再発行
を求めなければならない。
正解;1
【第100回薬剤師国家試験】
問220(実務)
55歳男性。現在、統合失調症の治療のためピモジド製剤を服用中で、コントロール良好である。健康診断(人間ドック)にて混合型脂質異常症及び萎縮性胃炎との診断を受けた。ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染の疑いがあり精査したところ陽性であった。
そこで、脂質異常症の治療及びピロリ菌の除菌をすることになり、以下の処方せんを持って薬局を訪れた。この処方せんを受け取った薬剤師が、疑義照会すべき内容はどれか。2つ選べ。
(処方1)
プラバスタチンNa錠10mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 夕食後 14日分
(処方2)
イコサペント酸エチルカプセル300mg 1回2カプセル(1日6カプセル)
1日3回 朝昼夕食前 14日分
(処方3)
ランソプラゾールカプセル30mg 1回1カプセル(1日2カプセル)
アモキシシリンカプセル250mg 1回3カプセル(1日6カプセル)
クラリスロマイシン錠200mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 7日分
(1)プラバスタチンNa錠の用法
(2)イコサペント酸エチルカプセルの用法
(3)ランソプラゾールカプセルとイコサペント酸エチルカプセルの相互作用
(4)アモキシシリンカプセルとプラバスタチンNa錠の相互作用
(5)クラリスロマイシン錠とピモジド製剤の相互作用
正解;(2)、(5)
クラリスロマイシン錠とピモジド製剤は併用禁忌である。
問221(物理・化学・生物)
ピロリ菌は、菌に特徴的な代謝反応を利用して胃内で生存することができる。この反応は、菌による感染の診断法として用いられている。この代謝反応はどれか。1つ選べ。
1 L-グルタミンからL-グルタミン酸とアンモニアを生成する反応
2 ホスホエノールピルビン酸とADPからピルビン酸とATPを生成する反応
3 尿素からアンモニアと二酸化炭素を生成する反応
4 L-アルギニンから尿素とL-オルニチンを生成する反応
5 アセチルCoAとオキザロ酢酸から補酵素A(CoA)とクエン酸を生成する反応
正解;3
尿素呼気試験法
ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素により、胃の中の尿素を分解して、アンモニアと二酸化炭素を生成します。尿素の分解により、アンモニアと同時に生じた二酸化炭素は速やかに吸収され、血液から肺に移行し、呼気中に炭酸ガスとして排泄されます。この原理を利用して、検査薬(13C-尿素)を患者さんに服用して頂きます。ピロリ菌に感染している場合では、尿素が分解されるため呼気に13ーCO2が多く検出されることになります。一方ピロリ菌に感染していない場合では、尿素が分解されないため13ーCO2の呼気排泄はほとんど起こりません。
NH²ー13C=O-NH² + H₂ O→ 13CO₂ + 2NH₃
SBOs1027;(前)多様な医療チームの目的と構成、構成員の役割を節啓できる。
【第99回薬剤師国家試験】
問324(実務)
問325 (法規・制度・倫理)
医療チームに関する説明について、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 チームの治療方針は、チームの構成員が個別に設定した目標に基づいて決定
する。
2 プライバシー保護の観点から、職能として知り得た患者情報は、できるだけ
共有しない。
3 薬剤が投与されていない患者についても、薬剤師がチームに関わる意義がある。
4 病院の診療科が少ない場合には、機能別の医療チームを構成する必要性が低い。
5 チームの構成員に、患者や家族を含めることも必要である。
正解;3 5
SBOs1021;副作用の発現について、患者の症状や検査所見等から評価できる。
【第103回薬剤師国家試験】
85歳女性。独居。かかりつけ医を受診し、処方箋を持って薬局を訪れた。薬剤を受け取って帰宅後にこの女性から薬局に電話があり、「薬を飲んだあと首のまわりが赤くなってきた」とのことだった。
問324 (実務)
薬剤師が行う対応として、優先度が高いのはどれか。2つ選べ。
1 市販の湿疹用軟膏の手持ちがあれば使用するよう助言する。
2 息苦しさや唇の腫れなどいつもと違う感じがないか確認する。
3 不安に対し時間をかけてカウンセリングを行う。
4 明日まで様子を見るよう助言をする。
5 副作用以外の可能性を探るための質問をする。
正解;2 5
問325 (法規・制度・倫理)
この患者が、この電話対応から2週間後に来局したとき、相談する相手もなく心細い様子だった。この患者への対応として、適切でないのはどれか。2つ選べ。
1 患者の気持ちを共感的に受け止める。
2 患者の話を要約して伝えることにより、互いの理解を確認する。
3 患者に同情して、薬剤師自身の体験を一方的に話す。
4 患者が聞きやすい声の高さや大きさに配慮する。
5 患者が自由に話しやすいように、閉じた質問をする。
正解;3 5
SBOs1045;(前)地域保健における薬剤師の役割と代表的な活動(薬物乱用防止
自殺防止、感染予防、アンチドーピング活動等)について説明できる。