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薬局実務実習の進め方2019

精神神経疾患と国家試験 2

精神神経疾患と国家試験 その2

 代表的な8疾患の一つである「精神神経疾患」に関して、実習生が薬局実務実習中にどの程度のパフォーマンスを習得すべきか考えると、やはり服薬指導時の患者様に対するパフォーマンスをイメージします。

 

患者様との服薬コミュニケーションの中で、どのレベルの知識・技能・態度が必要なのかの参考として薬剤師国家試験で正解できるレベルのパフォーマンスを習得していればいいのではないかと感じます。

 

また、最近の国家試験の傾向を見てもそのような問題が数多く出題されているのがわかります。11週間の薬局実務実習で実習生が習得したパフォーマンスが国家試験に関連していると分かれば、実習生もより薬局実務実習に積極的に参加できると思うので、そのような観点で過去の問題を紐づけていきたいと考えています。

 

 

 【第101回薬剤師国家試験】

 問 187

 58歳男性。21歳のとき、統合失調症を発症。その後、精神科への入退院を繰り返し、昨日、本院に入院。検査の結果、耐糖能異常が診断された。
薬歴として以下の処方が記載されていた。


(処方1)
 ハロペリドール錠 1mg 1回2錠(1日6錠)
  1日3回 朝昼夕食後 14日分
(処方2)
 オランザピン錠 5mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 朝食後 14日分
(処方3)
 フルニトラゼパム錠 2mg 1回1錠(1日1錠)
 酸化マグネシウム錠 250mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 就寝前 14日分
(処方4)
 フルバスタチン錠 20mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 夕食後 14日分


この患者の処方に対して薬剤師が、医師に処方変更を提案するとき、削除を提案
すべき薬剤はどれか。 1つ選べ。


 1  ハロペリドール
 2  オランザピン錠
 3  フルニトラゼパム
 4  酸化マグネシウム
 5  フルバスタチン錠

 

 正解;2

 服用している薬剤で、副作用として耐糖能異常が確認されているのは、添付文書を確認するとオランザピン錠のみである。オランザピン錠は、糖尿病またはその既往歴のある患者では禁忌となっています。また、著しい血糖上昇による死亡例も確認されているため緊急安全性情報が発出されている。

 

 

 問 208-209

 72歳男性。いつもは 21時頃に床に入り、夜間に1~2回トイレに起きることはあるが、眠れていた。1週間前より寝つきが悪くなり、内科を受診した。以下の処方箋が出され、保険薬局に持参した。併用薬はなく、肝機能、腎機能に異常はない。この薬剤を服用するのは初めてである。


(処方)
 ゾルピデム酒石酸塩錠5mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 就寝前 7日分


問 208(実務)
今回の処方に関する服薬指導として適切なのはどれか。 2つ選べ。


 1  眠れるようになれば、いつ服用をやめても構いません。
 2  就寝前に飲酒しても構いません。
 3  眠れなければ、服用量を増やしても構いません。
 4  グレープフルーツジュースを飲むのは避けてください。
 5  カフェイン(コーヒー、紅茶など)の摂取は、夕方以降は避けてください。

 

 

 正解; 解なし問題

 出題者は正解を4 5と考えていると思われますが、1や3も主治医との間でそのような説明がなされている場合も、実際の現場では考えられるため今回は解なしの解釈となったようです。

 

 

 


問 209(物理・化学・生物)
ゾルピデム酒石酸塩に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

 

 


 1  窒素原子アは sp³混成軌道をもつ。
 2  破線で囲んだ環は芳香族性をもつ。
 3  窒素原子イは、3つの窒素原子のうち最も塩基性が高い。
 4  酒石酸の立体異性体は、図に示したものを含めて4つある。
 5  この酒石酸は(2R,3R)の立体配置を有する。

 

 正解;2 5

 有機化学の問題です。好きな人は上手に説明してあげてください(笑)。

 

 

 問288-289

 60歳男性。2年前にうつ病と診断され、薬物治療を行ってきた。ここ数ヶ月、仕事が多忙になり、気分の落ち込みが激しくなった。本日受診した結果、主治医はこれまでの抗うつ薬を1錠から2錠に増量した。


(処方)
 セルトラリン塩酸塩錠 25mg 1回2錠(1日2錠)
  1日1回 夕食後 14日分


 問 288(病態・薬物治療)
以下のうち、この患者において注意すべき重大な副作用はどれか。 1つ選べ。


 1  腎不全
 2  セロトニン症候群
 3  間質性肺炎
 4  横紋筋融解症
 5  無菌性髄膜炎

 

 正解;2

 セルトラリンジェイゾロフト)はSSRI選択的セロトニン再取り込み阻害薬)であり、重大な副作用としてセロトニン症候群(不安、焦燥、興奮、錯乱、発汗、下痢、高血圧、固縮、頻脈、ミオクローヌス、自律神経不安定など)の報告が添付文書に記載されています。

 

 


 問 289(実務)
薬局薬剤師が、前問の重大な副作用を早期発見するために患者にあらかじめ説明
する事項として、適切でないのはどれか。 1つ選べ。


 1  高熱が出るようでしたら、お知らせください。
 2  下痢を起こすようでしたら、お知らせください。
 3  手足が勝手に動くことがあれば、お知らせください。
 4  不安やいらいらが高まるようであれば、お知らせください。
 5  手にピリピリする感覚や、やけどしたときのような痛みがあれば、お知らせく
   ださい。

 

 正解;5

 前問、セロトニン症候群の症状参照。

なお、5は手足症候群の初期症状であり、抗がん剤の副作用として知られている。

 

 

 【第102回薬剤師国家試験】

 問 252-253

 20歳女性。統合失調症と診断され、3ヶ月間、薬物治療が継続されていた。副作用は特にみられなかったが症状が改善されないため、主治医はクロルプロマジン塩酸塩錠を1日 300mg から 450mg へ増量した。


(処方)
 クロルプロマジン塩酸塩錠 100mg 1回1錠(1日3錠)
 クロルプロマジン塩酸塩錠 50mg 1回1錠(1日3錠)
  1日3回 朝昼夕食後 14日分


 問 252(実務)
この患者において注意すべき副作用の早期発見のために、薬剤師が患者や家族にあらかじめ説明する症状として、適切でないのはどれか。 1つ選べ。


 1  強い眠気
 2  起床時の立ちくらみ
 3  手の震えや体のこわばり
 4  歯ぐきの腫れ
 5  視野の狭窄や物の見えにくさ

 

  正解;4

 クロルプロマジン(ウィンタミン、コントミン)は、フェノチアジン誘導体系の統合失調症治療薬です。重大な副作用として悪性症候群(Syndrome  malin)による死亡例の報告があるので注意が必要です。

作用機序として、5‐HT受容体遮断作用、ドパミンD2受容体遮断作用、ヒスタミンH₁受容体遮断作用、ムスカリンアセチルコリン受容体遮断作用、α₁アドレナリン受容体遮断作用がありますので4の歯茎の腫れは適切でないと推測できる。

 

 

 


 問 253(薬理)
この処方が引き起こす可能性がある副作用について、その発現機序はどれか。
2つ選べ。


 1  アンギオテンシンⅡ AT₁受容体遮断により歯肉肥厚が起こる。
 2  アセチルコリン M₃受容体遮断により眼圧亢進が起こる。
 3  ヒスタミン H₁受容体遮断により眠気が起こる。
 4  アドレナリン α₁受容体遮断により錐体外路障害が起こる。
 5  ドパミン D₂受容体遮断により起立性低血圧が起こる。

 

  正解;2 3

歯肉肥厚が副作用として知られているのは、フェニトインや降圧薬のCa拮抗薬で、コラーゲンの産生が亢進するのが原因だと考えられている。

 

 

 

 問296-297

 45歳女性。10年前より双極性障害で加療中。処方1の維持療法で病状は安定していたが、ここ1ヶ月で症状が悪化したため、本日新たに処方2が追加された。


(処方1)
 炭酸リチウム錠 200mg 1回1錠(1日2錠)
  1日2回 朝夕食後 7日分
(処方2)
 ラモトリギン錠 25mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 夕食後 7日分


処方箋を受け取った薬局の薬剤師は、安全に薬物療法を実施できるよう、患者に対
し注意すべき事項を伝えた。


問 296(実務)
今回追加処方された薬剤の重大な副作用の初期症状の組合せとして、患者に伝え
るべきことはどれか。 1つ選べ。


 1  皮膚の広い範囲が赤くなる、38℃以上の熱がでる、眼が充血する、唇や口の中
   がただれる、のどが痛む、体がだるい。
 2  急に強い空腹感をおぼえる、冷や汗がでる、手足がふるえる、力の抜けた感じ
   がする。
 3  息切れがする、息苦しくなる、空咳がでる、発熱する。
 4  筋肉が痛んだりこわばったりする、手足がしびれる、手足に力が入らない、尿
   の色が赤褐色になる。
 5  眼の痛みを生じる、眼がかすむ、頭痛がする、吐き気がする。

 

 

  正解;1

 ラモトリギン錠は、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)及び中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)等の重篤な皮膚障害があらわれることがあり、死亡例も報告されているので注意が必要です。

 

 

 

 


 問 297(病態・薬物治療)
 この患者の薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。


 1  ラモトリギンは、気分エピソードの中でも、特にうつ状態に対する効果が強
   い。
 2  ラモトリギンが追加されたので、定期的なラモトリギンの血中濃度測定を行う
   必要がある。
 3  炭酸リチウムの1日投与量が 400mg なので、定期的な血中濃度測定を行う必
   要はない。
 4  炭酸リチウムの中毒が疑われる際の治療には、ループ利尿薬が適している。
 5  ラモトリギンが使用できない場合は、オランザピンを推奨する。

 

  正解;1 5

 ラモトリギンはTDMの対象となる薬剤ではないが、炭酸リチウムはTDMの対象となる薬剤である。

 また、ラモトリギンの効能効果は、「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」であるので、同じ適応をもつオランザピンは代替薬として推奨できる抗精神病薬である。その他、アリピプラゾール(エビリファイ)も抗精神病薬双極性障害の適応を持つ薬剤である。

 リチウム中毒の初期症状は、食欲低下、嘔気・嘔吐、下痢などの消化器症状、振戦、傾眠、錯乱等の中枢神経症状、運動障害、運動失調などの運動機能症状、発熱、発汗等の全身症状があり、中毒が進行すると急性腎不全により電解質異常が発現し全身痙攣、ミオクローヌスなどが表れる。

 特異な解毒剤は見出されていないので、利尿薬などで排泄促進を行う。利尿薬で反応しない場合は血液透析を施行する。

 利尿薬でも、サイアザイド系利尿薬、ループ系利尿薬はNa排泄促進により腎におけるリチウムの再吸収が促進され、リチウムの血中濃度が上昇するので不適である。