薬局実務実習11週間(55日)15日目のスケジュール
薬局実務実習11週間(55日)15日目の
スケジュール
第3週目が終了です。
何度も同じことを繰り返し参加・体験し実習生の行動(パフォーマンス)の「質」が上がっていくように心がけて実習に取り組んで行けるといいですね。
例えば、代表的な8疾患である「高血圧症」の患者様に関して考えてみると、「高血圧症」といっても様々な病態の患者様がいることが想定できます。
【高血圧症】
厚生労働省の調査によると、高血圧症患者数はおよそ1000万人以上と言われており高血圧治療薬の年間の市場規模はおよそ1兆8000億円に達すると言われています。生活習慣病といわれる疾患で、糖尿病、脂質異常症、肥満と合わせて「死の4重奏」といわれる。治療方法は、運動療法、食事療法、薬物療法が考えられるがまずは食事療法、運動療法を優先的に選択し、改善が見られない場合は薬物療法を考慮する。
病態により、本態性高血圧症と2次性高血圧症に分類され薬物治療には多くの薬剤が使用されている疾患である。高血圧治療ガイドラインが定期的に専門機関より公表されるので、それに乗っ取って治療することになる。薬物治療の代表的な薬剤(第一選択薬)は、カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害剤、利尿薬があります。単剤、併用で効果が見られない場合は、β遮断薬、α1遮断薬、直接的レニン阻害薬、選択的アルドステロン拮抗薬、血管拡張薬を選択薬とする。
高血圧治療薬を服用している患者様の服薬指導を体験してもらうにも、最初は1剤だけ服用している患者様を担当してもらいますが、慣れてきたら合併症も治療していて5~6剤の医薬品を服用している患者様の服薬指導を任せるようになっていきます。こうなると指導薬剤師も、後者の服薬指導時には事前により多くの事を実習生に求めると思います。
そして、こうなると処方箋の情報だけでは足りないので、薬歴を読み返したりしてどのような治療の経過をたどっているかを確認して、継続的に患者様のQOLが維持されるには今日は何を確認すればいいのかなど、より多くの「知識」、「技能」が必要になってきます。また、少し神経質な患者様であればそれに合わせた「態度」も必要になってきます。
薬局で長く従事しているベテラン薬剤師は、この程度であれば無意識に頭の中で解析して患者様が気持ちよく薬局を利用できるように対応できます。その頭の中で解析している部分を会話や文書にして、実習生に見せてあげることが現場で行う実務実習の意義だと思いますので、作業としてはとても手間がかかりますがそのような行動を指導薬剤師は心がけたいと思います。
【15日目】第3週5日目
本日のスケジュール(学習目標) チェックポイントSBOs
AM1 P313 SBOs942
計数調剤(軟膏・水剤・散剤)
AM2 P210 SBOs1026
医療スタッフとの連携、患者情報共有の重要性、
情報の授受
PM1 P304 SBOs955
処方箋の受け付け、医療人としての態度、
話ができる工夫、服用上の問題点の把握
PM2 P406~407 SBOs948
カウンター実習
PM3 P204 SBOs923
薬歴からの患者情報の把握
SBOs942;特別な注意を要する医薬品(劇薬・毒薬・麻薬・向精神薬・
抗悪性腫瘍薬)の調剤と適切な取り扱いができる。
(知識・技能)
SBOs1026;(前)チーム医療における薬剤師の役割と重要性について説明できる。
SBOs955;患者・来局者の病状や背景に配慮し、医薬品を安全かつ有効に使用する
ための服薬指導や患者教育ができる。(知識・態度)
SBOs948;(前)代表的な疾患において注意すべき生活指導項目を列挙できる。
SBOs923;薬歴、診療録、患者の状態から処方が妥当であるかを判断できる。
(知識・技能)
高血圧症の治療のゴール(エンドポイント)は何でしょう?
わたくしも、実習生によくこの質問をします。
「血圧を下げる事です。」 (代替エンドポイント)
と、多くの実習生が答えますが果たしてそうでしょうか?
それだけですか?とさらに質問をすると、
(真のエンドポイント)
「合併症を防ぎQOLを改善・維持する事。」
や、
「脳血管疾患や心血管疾患、腎不全を防ぎ、寝たきりにならないこと。」
だという事に実習生も気づくはずです。
言い方は乱暴ですが、アドヒアランスが悪くて血圧コントロール不良でコロッと行ってしまえばいいですが、寝たきりになるとさらに医療費はかかるし、家族は介護で疲弊してしまい誰にもいいことがありません。ですので、年間1000万人以上の患者様に1兆8000億円もの治療費がかかっていたとしても、寝たきりにならずにQOLが上がればそれはむしろ安上がりと考えるべきではないでしょうか。
血圧を下げるだけで良いという知識で服薬指導をすると「下がったらやめていい?」
という患者様からの質問にも戸惑いますが、真のエンドポイントを理解していると
「下がったらやめていい?」という質問にも戸惑わずに的確に対応できるようになって来ると思います。
最初から難しいことが出来なくても、段階的に質(クオリティー)や難易度を意識して実習を進めていくと実習生の成長が自然に感じられると思いますので、常に目標を意識して実務実習を進められるといいですね。