薬局実務実習11週間(55日)10日目のスケジュール
薬局実務実習11週間(55日)10日目の
スケジュール
10日目になりました。2週間が経過しましたのでここで、概略評価表を使用して実習生の「学習成果(アウトカム)・パフォーマンス(学習目標)の到達度」を評価する時期となります。概略評価表は、日本薬剤師会が設定したものが標準になると思いますのでそちらを利用します。
現在、進行しているカリキュラムは、
(1)薬学臨床の基礎
(2)処方箋に基づく調剤
(3)薬物療法の実践
の3項目を日々、現場で起こる事象に基づいて実習生に参加・体験してもらっています。各項目には、実習生の「パフォーマンス(学習目標)」の進捗度合いを確認するための「チェックポイントSBOs」が存在します。
例えば、(2)処方箋に基づく調剤 について考えると実習生がどのようなことができるようになれば実習の目標に到達したことになるでしょう。大きな目標としては、「薬剤師と同じレベルで業務にあたれる」ことが目標ですが、これをGIOと呼び、一般目標として提示されています。
(2)処方箋に基づく調剤のGIOは以下の通りです。
GIO 処方箋に基づいた調剤業務を安全で適正に遂行するために、医薬品の供給と
管理を含む基本的調剤業務を習得する。
となります。
これを達成するには様々な能力が必要です。
例えば、
関連法規を理解している。
処方箋の適切な記載内容を知っている。
不備を見つけて疑義照会ができる。
一包化の必要性を理解して、患者様に提案できる。
適切な態度で、来局者と接することができる。
適正な在庫量を把握して、欠品が起こらないように在庫管理ができる。
などです。
これが、すなわちチェックポイントとなるSBOsという事になります。日々、現場の薬局でいろいろな事に実際に参加・体験していくとその能力が少しづつ身に付き、出来ることが増えてくると思います。その身についた能力には、「質(レベル)」がありますのでそれを定期的に(2~4週間を目安に)「評価」するツールが「概略評価表」という事になります。
5日目のスケジュールのところには「医薬品の調製」というアウトカム(学習成果)に対する4段階の概略評価表を記載しました。今回は見にくいかもしれませんが4つの項目の概略評価表を記載しておきます(公益社団法人日本薬剤師会設定)。
目標 | STEP4 | STEP3 | STEP2 | STEP1 | |
A医薬品の調製 | より本格的な医薬品の調製や供給・管理が できる |
アドヒアランスを考慮し、新たに収集した患者情報や薬歴等を参照して医薬品の調製ができる。また、薬局で使用されている全てのアイティムを適正な手順で記録し、保管できている。 | 複雑な処方箋であっても再現性良く、スムーズかつ正確な調剤が出来ている。個々の患者の病状や状態を確認し、調剤上の工夫を提案できている。また、薬局で使用される全ての医薬品を適切な手順で記録して、保管ができている。 | 一般的な計数・計量調剤や調剤上の工夫等の対応ができている。また、医薬品の性質を理解し、薬局の管理手順に従い供給・管理ができている。 | 基本的な処方箋の計数・計量調剤が出来ている。また、医薬品の供給について薬局内の基本的な医薬品の在庫管理が出来ている。 |
B処方監査・医療安全 | 医療安全の視点を考慮し、患者の状態を評価した上で監査ができる | 患者の病状の経過・生活環境・ナラティブを考慮しながら、処方の妥当性を判断出来ている。必要に応じて、医療安全の見地からより適切な処方設計の提案ができている。 | 収集した患者情報(面談・薬歴・お薬手帳等)から得られた情報と薬学的知見を統合して処方内容の監査ができている。必要に応じて、自らの判断で多職種に情報提供が出来ている。インシデント事例発生後の対応について考察できている。 | 基本的な医薬品情報及び患者情報に基づいて、すべての処方箋と調剤薬に関して適切な監査ができ、必要に応じて疑義照会が実践できている。またインシデント事例に基づいた防止策の提案が出来ている。 | 実習施設内の医療安全管理指針等に基づき、単純な処方箋について記載上の不備を指摘し、疑義照会すべき内容とその手順を把握し指導薬剤師の助言に基づいて実践できている。 |
C服薬指導 | 個々の患者の視点に立った服薬指導が できる |
個々の患者の身体状況や生活環境等、情報収集した内容を分析し、その結果から指導に必要な事項を導き出し、その患者に最適な服薬指導を行える。さらに、収集した情報を検討して薬歴に記載し、薬物療法に活用できる。 | 過去の記録、最新の医薬品情報及び患者との面談から得た情報を基に指導に必要な項目を抽出・分析し、服薬指導に活用できている。 | 患者と面談し収集した情報やさまざまな情報源から必要な項目を抽出でき、さらに服薬指導時に活用できている。その結果を適切に記録できている。 | コミュニケーションの基本に基づき、患者から薬物治療に係る基本的な情報を収集し、薬物治療に係る基本情報を患者に提供できている。 |
D薬物療法の実践 | 薬物治療の経過に応じた対応ができる | 薬物治療に関する経過モニタリングを基に患者の状況を総合的に判断して適切な対応ができ、より治療効果の高い処方提案ができる。 | 薬歴や服薬指導を通して、薬物療法の効果を評価し問題点(副作用など)を発見・抽出し、対応策の提案を実践できている。また、それらの内容を他の薬剤師と共有するための記録が適切に実施できている。 | 収集した患者情報および処方内容から薬物療法に係る基本的情報の加工ができ、医薬品情報や治療ガイドラインを参考にして、基本的な処方の想定と実際の処方内容から病態を確認できている。 | 薬物療法の有効性、服薬状況などの基本的な安全性の問題点を認識し、一連の情報を整理できている。 |
まだ2週目が終わったばかりですので、各項目でSTEP1が出来ていれば問題ないと思います。大切なのは、STEP0もあるというところです。実習に来た初日は知らないことばかりでSTEP1にも達していないところから始まっています。日に日に出来ることが増えてかつ、出来ることの質が上がっていくイメージでこの表を活用できるといいと思います。
そして、11週間が終了した時点ではSTEP3のレベルで業務にあたれていることを目指します。STEP4は、現場の薬剤師も目指したいレベルと考えています。
【10日目】第2週5日目
本日のスケジュール(学習目標) チェックポイントSBOs
AM1 P329 SBOs980
調剤過誤防止対策・類似医薬品
AM2 P330 SBOs981
調剤過誤防止対策・リスクの高い医薬品
PM1 P310 SBOs943
計数調剤
PM2 P406~407 SBOs892
カウンター実習
PM3 P202 SBOs994
医薬品の情報収集・添付文書からの情報収集
SBOs980;調剤ミスを防止するために工夫されている事項を具体的に説明できる。
SBOs981;施設内のインシデント(ヒヤリハット)、アクシデントの事例をもとに、
リスクを回避するための具体策と発生後の適切な対処方法を提案
することができる。(知識・態度)
SBOs943;調製された薬剤に対して、監査が実施できる。(知識・技能)
SBOs892;患者・生活者の基本的権利、自己決定権について配慮する。(態度)
SBOs994;施設内において使用できる医薬品の情報源を把握し、利用することが
できる。(知識・技能)
実習生を見ていると感じるのは、一般名には強いですが商品名には結構弱い印象があります。学生なので当然なのですが、商品名を記憶して成分名に転換して薬効につなげる作業に時間がかかるので治療薬マニュアルなどの書籍は持参していますが、やはり添付文書を沢山読んでもらうことが大切になってきます。したがって、わたくしは積極的に添付文書をファイリングしてもらうように促します。われわれ薬剤師も、すべての事項を完全に記憶してはいませんがどこに知りたい情報が記載してあるのかを知っているので必要な情報を収集することは容易です。実習生は、意外と添付文書の記載事項を理解していないので添付文書の重要性を理解してもらういい機会となります。
また、実習生にもこの時期くらいから後半の服薬指導、カウンセリングに向けてたくさんの知識を添付文書から習得するようにしてもらいます。もしわからないことがあればネットで検索もいいですが敢えて、製薬メーカーのDI室に電話をしてもらい情報収集をしてもらうことも実習の大切なSBOsの一つです。
SBOs980;調剤ミスを防止するために工夫されている事項を具体的に説明できる。
SBOs981;施設内のインシデント(ヒヤリハット)、アクシデントの事例をもとに、
リスクを回避するための具体策と発生後の適切な対処方法を提案
することができる。(知識・態度)
調剤薬局で業務を行っていると、患者様にお渡しする前の調剤ミス(ヒヤリハット)と、そのまま間違えた医薬品をお渡ししてしまった場合の調剤ミス(調剤過誤)があると思います。そして、間違えてお渡ししてしまった医薬品を患者様も気づかずに服用してしまった場合が、その健康被害の有無にかかわらず「調剤事故」と位置付けられます。
薬剤師も人間ですので、細心の注意を払って調剤していても時には間違えて調剤してしまうこともあるかと思います。しかし、現場には複数のスタッフがいるので互いに協力し合って患者様にお渡しする前に気づいて修正できる体制を構築して「調剤事故」が起こらないようにすることが大事です。
それぞれの薬局で、「ヒヤリハット」から学び、様々な過誤防止の工夫がなされていると思いますので、具体的に実習生に説明して実習期間中に「調剤過誤」や「調剤事故」が起こらないように注意を喚起していきましょう。
そして万一、「調剤事故」が起こってしまった場合は健康被害の有無にかかわらず速やかに誠意をもって対応にあたることが大切です。先日、わたくしの勤務する薬局で「調剤事故」が発生してしまい患者様から連絡を受けた時も、直ぐに患者様に謝罪をしに行ったところ後日、その時の早急な対応が良かったため許す気になったと言っていただきました。やはり、「ごまかさない」、「隠さない」、「言い訳しない」など誠意のある対応の大切さを身にしみて感じました。