薬学実務実習 新モデルコアカリキュラムに即した実習とは?(1)
薬学実務実習
新モデル・コアカリキュラムに即した実習とは?
~新コア対応 実務実習の進め方 Imperfectなマニュアル~
2019年2月より、いよいよ改定(新)モデルコアカリキュラムでの実務実習が始まります。すなわち、改定(新)モデルコアカリキュラムに沿った学習概念で1年生から学んできた薬学生が5年生になることを意味します。
教育概念は、当然ですが薬学部だけでなくあらゆる教育分野で定期的に見直されていますが、教育概念が変わればその教育手法も変更しなくてはならないので薬学教育の一環である「実務実習」もそれに乗っ取って運営されなければなりません。
現場の薬剤師の先生方には、今までとは違う教育概念でこの実務実習を日々進行していかなければならないので、大変な労力が必要ですが、後進の育成は病院、薬局に与えられた使命です。各薬剤師会などで指導薬剤師養成WS(ワークショップ)やアドバンストWSなどを受講して新しい知識を習得しているとは思われます。しかし、1回受講しただけではなかなか把握しづらいところもあるのではないでしょうか?
そんな不安や疑問点を皆様で共有し、11週間の実務実習を楽しく過ごしていきたいとわたくしも思っています。では、どうしたら充実した実務実習になるのだろうと考えて、このブログを思いつきました。巷では、『パーフェクトマニュアル』などの書籍も続々と発売が開始されていますが、結構高価なんですよね~。同じような内容の物がネットなどにはなかなか検索されないので、無料で少しでも現場のお役に立てるようなものを作成できないかと勝手に考えています。
申し遅れました。わたくし、このブログの管理者のsikkouyakuin1118です。調剤薬局の薬剤師で現場でも10年くらい実務実習に関わっています。また、県薬剤師会の指導薬剤師養成WSの委員も担当させていただいておりまして、未来の指導薬剤師を養成するWSにも関わらせて頂いています。わたくしの勤務する薬局は複数店舗を展開しておりますので(いわゆる大手、ナショナルチェーンではありません)、他の店舗でも同様の実務実習が行われるときに管理監督する責任者もさせて頂いておりますので、この10年間でかなりの数の実習生の指導に関わらせて頂きました。その経験を元に、このブログでいろいろな情報を公開していきたいと考えている次第です。
さて、実務実習ですが、とはいえ、全く違うものになるわけではありません。カリキュラムの三要素である、「目標」、「評価」、「方略」を念頭に実務実習を日々、進行していただくことには何ら変更はございません。ただ、その方法に若干の変更が生じただけですので、そこを理解すれば今までの実務実習と内容的には何ら変わりはありません。将来、地域に貢献する薬剤師を育成するという事には変わりはなく、その過程に多少の変更点があるという事を理解すれば今まで通りの楽しい充実した11週間が過ごせることは間違いありません。
では、新モデルコアカリキュラムに変わって何が変わったのかを順を追って説明していきたいと思います。ブログの流れとしては、
・薬学教育の構成について
・プロセス基盤型教育と学習成果基盤型教育の違い(目標・評価・方略)
・代表的な8疾患について
・現場の薬局では何が変わるのか(知識・技能・態度とパフォーマンスの違い)
・11週間のスケジュール(55日間を1日ごとに)これが一番変わった!
を基本として、途中では日々の教育手法などを織り込んでいけたらと考えています。
まずは、薬学教育の構成についてみていきます。
~薬学教育モデル・コアカリキュラムの構成~
A 基本事項
B 薬学と社会
C 薬学基礎
D 衛生薬学
E 医療薬学
F 薬学臨床 ⇔ ここが病院・薬局の実務実習で身につける能力
G 薬学研究
**実務実習で病院・薬局の指導薬剤師が教育者として担当するカリキュラムがFの薬学臨床の項目となります**
F 薬学臨床の構成
薬学臨床の構成は以下の通りです。最終的に実務実習が終了したときに薬学生が習得している大きな学習目標を『GIO』と呼んでおり、大きく5つの項目から成り立っています。
GIO(General Instructional Objective)
一般目標;患者・生活者本位の視点に立ち、薬剤師として病院や薬局などの臨床現場で活躍するために、薬物療法の実践と、チーム医療・地域保健医療への参画に必要な基本的事項を習得する。
この『GIO』を習得するために薬学生は、それぞれ5つの項目に分けて学ぶことになります。
【1】 薬学臨床の基礎
【2】 処方箋に基づく調剤
【3】 薬物療法の実践
⇔【概略評価】を行う領域
【4】 チーム医療への参画
【5】 地域の保健・医療・福祉への参画
⇔【実務実習記録による評価】を行う領域
この5項目の能力を実務実習の中で身に付けていくことになります。項目ごとに『評価』の仕方が変わったのが今回の新モデルコアカリキュラムの特徴です。
【1】~【3】に関しては薬剤師の基本的な能力でありその能力の「質」に違いはありますがすべての薬剤師が最低限持つべき能力となります。
【4】.【5】については【1】~【3】の能力を活用してより実践的な環境で発揮する能力と考えられます。実務実習で薬学生がこの能力を身に付けるのに最適な環境(学習方略)をデザインするのが指導薬剤師の役目となります。
【1】~【3】は、その能力の「質」を段階的に評価する必要があるので「概略評価」(ルーブリック評価ともいわれている)を行い、一方【4】.【5】に関しては「実務実習記録(日誌・レポートなど)による評価」を行います。
また、F薬学臨床に関わるSBOs(チェックポイント)は全部で176項目ありますので、実習中にそのすべてのSBOsをチェックポイントとして活用できるように心がけていきます。SBOsに関しては、今後、詳しく説明をしていく予定です。
*SBOs;Specific Behavioral Objectives 行動目標
本日はこの辺で。次回以降は変更点などについて詳しく説明していきたと思います。
カリキュラム変更に伴い、日々のスケジュールがなくなってしまうようなので指導薬剤師にとってはスケジュールを立てる手間が無くなるので楽にはなりますが、逆に「学習目標」が無いと何を教えればいいかという日々の指標がなくなる不安がありますので、毎日の「学習目標」に関しては今後、順次公開していく予定です!
ではでは。。。