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薬局実務実習の進め方2019

47日目 高血圧と国家試験

47日目 第10週2日目

 

 薬局実務実習も終盤です。

薬剤師の業務で重要度が高い「対人業務」である、服薬カウンセリング業務に積極的に参加・体験してもらい多くの「代表的8疾患」に触れていただく機会を作っていきたいですね。

 

 代表的な8疾患

 

 がん、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、アレルギー、感染症

 

 最近の国家試験の問題を見てみると、この8疾患を意識した問題を出題している傾向があるので、実習生が実務実習で経験したことが将来受験する国家試験で役に立つような実習になると、より有意義ではないかと考えています。

 また、知識レベルとしてどのレベルまで国家試験が求めているのかを指導薬剤師が知ることで、実習生に求める知識レベルの参考になると思いますので今後は過去の国家試験の問題を疾患別にまとめていきますので参考にしてください。

 

 今回は、「高血圧症」に関する過去問をピックアップしてみます。

 

 

 

 【第100回薬剤師国家試験】

 問 152

 レニン-アンギオテンシン系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのは
どれか。2 つ選べ。


 1  アドレナリン β₁受容体遮断薬は、レニン分泌量を減少させる。
 2  アルドステロン受容体遮断薬は、レニン分泌量を減少させる。
 3  アンギオテンシン ⅡAT₁受容体遮断薬は、アルドステロン分泌量を増加させ
   る。
 4  レニン阻害薬は、血中のアンギオテンシンⅠとアンギオテンシンⅡ の量を減少
   させる。
 5  アンギオテンシン変換酵素阻害薬は、血中のブラジキニン量を減少させる。

 

  

  正解;1 4

 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系のメカニズムに関する問題です。

アドレナリンβ1受容体を刺激するとレニンの分泌が亢進するので1の記述は正しい。

2 アルドステロン受容体遮断薬は、エプレレノン(セララ)のことでアルドステロ

  ンに拮抗すると血中のNa濃度が低下しRAA系が亢進してレニン分泌が増加します。

3 ARBがATⅡタイプ1受容体をブロックするとアルドステロン分泌は抑制される。

4 直接的レニン阻害薬は、アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)のことでレニンを

  阻害するのでアンジオテンシンⅠ、Ⅱともに分泌は低下する。

5  ACEはブラジキニン産生の酵素でもあるのでACE阻害剤によりブラジキニン

   生は亢進する。ブラジキニン産生により空咳の副作用が発生する。

 

 

  問256-257

 55歳女性。気管支ぜん息のため吸入ステロイド薬を用いて治療中である。
高血圧症となったため、降圧薬も用いることとなった。


 問 256(実務)
   この患者に対して禁忌である薬剤はどれか。1 つ選べ。


  1  シルニジピン錠
  2  イミダプリル塩酸塩錠
  3  テルミサルタン錠
  4  クロニジン塩酸塩錠
  5  カルテオロール塩酸塩徐放性カプセル

 

 

  正解;5

   1シルニジピン Ca拮抗薬

  2イミダプリル ACE阻害薬

  3テルミサルタン ARB

  4クロニジン 交感神経抑制薬

  5カルテオロール βブロッカーで気管支喘息には禁忌


 問 257(薬理)
 前問の薬剤のうち、血管平滑筋細胞に直接作用して血管を拡張させるのはどれ
か。 2つ選べ。


  1  シルニジピン錠
  2  イミダプリル塩酸塩錠
  3  テルミサルタン錠
  4  クロニジン塩酸塩錠
  5  カルテオロール塩酸塩徐放性カプセル

 

  

  正解;1 3

  血管平滑筋に直接作用する降圧薬は、Ca拮抗薬とARBが考えられます。

 

 

 

 【第101回薬剤師国家試験】

 問 185

 42歳女性。健康診断で高血圧症を指摘されたため、内科を受診した。検査の結果、血清カリウムの低下、血漿レニン活性の低下、血漿アルドステロン濃度の上昇を認めた。さらに検査入院し、カテーテル検査にて両側副腎静脈より採血し、血漿アルドステロン濃度を測定したところ、片側のアルドステロン濃度の著明な上昇がみられた。他の生化学的検査値には異常を認めず、特記すべき家族歴もなかった。
この患者の病側副腎摘出手術を行うまでの期間、高血圧症に対する治療薬について、医師より薬剤師に相談があった。提案すべき治療薬はどれか。 1つ選べ。

 


 1  トリクロルメチアジド
 2  スピロノラクトン
 3  アリスキレンフマル酸塩
 4  バルサルタン
 5  リシノプリル水和物

 

 

  正解;2

 1  トリクロルメチアジド   サイアザイド系利尿薬
 2  スピロノラクトン     カリウム保持性利尿薬
 3  アリスキレンフマル酸塩  直接的レニン阻害薬
 4  バルサルタン       ARB
 5  リシノプリル水和物    ACE阻害剤

 

 この患者様の情報を確認すると、原発性アルドステロン症による高血圧と考えられるので、アルドステロン拮抗薬であるスピロノラクトンが適応となる。

 

 

 

   問198-199

 77歳女性。以下の処方箋を持って薬局を訪れた。患者の話から、最近、ものが飲み込みにくいとのことであった。


(処方)
 ニフェジピン徐放錠(24時間持続)20mg 1回1錠(1日 1錠)
  1日1回 朝食後 14日分 粉砕


 問 198(実務)
 この処方に関する疑義照会として適切なのはどれか。 1つ選べ。


 1  簡易懸濁法で投与するよう提案する。
 2  粉砕せず、そのまま舌下に含むことを提案する。
 3  同用量のニフェジピンカプセルに変更し、脱カプセルして朝食後に舌下に含む
   ことを提案する。
 4  同用量のニフェジピンカプセルに変更し、脱カプセルしてゼリーなどに混ぜて
   朝食後に服用するよう提案する。
 5  同用量のニフェジピンの持効性細粒に変更し、朝夕食後に分けて投与するよう
   提案する。

 

 

 

   正解;5

  徐放錠は、粉砕するとその特性が失われて期待した効果が得られない可能性があるため、粉砕や簡易懸濁法には不向きである。

 また、カプセル剤を脱カプセルし、舌下で投与する方法は以前、急な高血圧患者の降圧に病院で繁用されたこともあるが、安全性が担保できないとのことで最近ではこのような投与をしない傾向にあります。

 

 



  

 

 

  問272-273

 58歳男性。本態性高血圧症及び狭心症に対して外来で薬物治療を受けていたが、急に症状が悪化したため入院となった。薬剤師が面談し、薬物の使用状況等について尋ねたところ、めまいや、一過性の意識障害などの症状が現れることが時々あったため、最近になって自己判断で服薬を止めていたことが判明した。


 問 272(実務)
 この患者が服用していた薬物として最も可能性が高いのはどれか。 1つ選べ。


 1  アリスキレンフマル酸塩
 2  エナラプリルマレイン酸
 3  カンデサルタンシレキセチル
 4  ニフェジピン
 5  フロセミ

 

 

  正解;4

   1  アリスキレンフマル酸塩    直接的レニン阻害剤
   2  エナラプリルマレイン酸塩   ACE阻害剤
   3  カンデサルタンシレキセチル  ARB
   4  ニフェジピン         Ca拮抗薬  
   5  フロセミド          ループ利尿薬

 

 いずれも高血圧治療薬であるが、狭心症の治療に用いられる薬剤は、4のみである。

 


 問 273(薬剤)
 服薬中止のきっかけとなった症状は、この患者が最近摂取し始めた食品あるいは
一般用医薬品との相互作用に起因すると考えられた。摂取していた可能性が最も高
いのはどれか。 1つ選べ。


 1  牛乳
 2  鉄製剤
 3  アルミニウムを含む制酸剤
 4  グレープフルーツジュース
 5  セントジョーンズワートを含む健康食品

 

 

  正解;4

   ニフェジピンはCYP3A4で代謝れる薬剤であるが、グレープフルーツはそれを阻害する成分が含まれているのでニフェジピンの血中濃度が上昇し、副作用の発現頻度が上がる危険性があります。

 また、セントジョーンズワートを含む健康食品(セイヨウオトギリソウ)はCYP3A4やCYP1A2等の酵素を誘導する作用があるので相互作用に注意すべき食品である。

 

 

 【第102回薬剤師国家試験】

  問158

 高血圧症治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。


 1  プロプラノロールは、傍糸球体細胞からのレニン分泌を抑制する。
 2  アリスキレンは、アンギオテンシンⅠの産生を抑制する。
 3  カプトプリルは、一酸化窒素(NO)の産生を抑制する。
 4  カンデサルタンは、アンギオテンシンⅡ の産生を抑制する。
 5  エプレレノンは、アルドステロンの分泌を抑制する。

 

 

  正解;1 2

  一酸化窒素(NO)産生を抑制すると、一般的に血管は収縮し血圧は上昇する。

 すなわち、NOは血管拡張作用を有しており降圧効果に影響する因子である。

 カプトプリルはACE阻害剤でありアンギオテンシンⅠからアンギオテンシンⅡの産生を抑制して血管拡張作用を示す。

 一方でブラジキニンの産生を亢進させ(キニン・カリクレイン系)NOやプロスタサイクリンの産生は亢進する。

 

 

 

 

 

  問 250-251

 72歳男性。腎実質性高血圧症で循環器内科を受診し、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。

 

 循環器内科
 (処方1)
  エホニジピン塩酸塩エタノール付加物錠 20mg 1回1錠(1日1錠)
  イミダプリル塩酸塩錠 5mg 1回1錠(1日1錠)
    1日1回 朝食後 28日分


お薬手帳で併用薬を確認したところ、他の医療機関(消化器内科)で処方された以
下の薬を服用中であった。患者は消化器内科の薬について、循環器内科の医師に伝
えていないとのことであった。薬剤師として処方医(循環器内科)に併用薬の情報
提供と処方内容の確認が必要と考えた。


 消化器内科
 (処方2)
  ラニチジン錠 75mg 1回1錠(1日2錠)
  1日2回 朝食後、就寝前 28日分


 (処方3)
  テルミサルタン錠 40mg 1回1錠(1日1錠)
    1日1回 朝食後 28日分


問 250(実務)
処方1、処方2及び処方3が併用投与された場合、生じる可能性が最も高い事象
はどれか。 1つ選べ。


 1  イミダプリル塩酸塩とテルミサルタンの併用による血清カリウムの上昇
 2  イミダプリル塩酸塩とテルミサルタンの併用による乳房腫脹
 3  エホニジピン塩酸塩エタノール付加物とラニチジンの併用による血清カルシウ
   ムの低下
 4  エホニジピン塩酸塩エタノール付加物とラニチジンの併用による振戦
 5  エホニジピン塩酸塩エタノール付加物とテルミサルタンの併用による高血糖

 

 

  正解;1

 ACE阻害剤とARBの併用により、ともにアルドステロンの産生を抑制するため、

高K血症の発現に注意する必要がある。

 


問 251(薬理)
前問の「生じる可能性が最も高い事象」の発現機序として正しいのはどれか。
1つ選べ。


 1  L型 Ca²⁺チャネル遮断
 2  ドパミン D₂受容体遮断
 3  ヒスタミン H₂受容体遮断
 4  アルドステロン分泌抑制
 5  インスリン分泌抑制

 

 

 

  正解;4

 

 

 

 【第103回薬剤師国家試験】

 問 246−247 

 66 歳男性。内科で処方された以下の薬剤(処方 1、 2 )を指示通りに服用していた。別の病院の泌尿器科を受診し、前立腺肥大症と診断された。泌尿器科で処方された前立腺肥大症治療薬を自宅で服用したところ、ひどい立ちくらみが起こり救急車で搬送され、血圧降下が原因と診断された。

 


(処方 1 )
 オルメサルタンメドキソミル錠 20mg1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
 シタグリプチンリン酸塩水和物錠 50 mg1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
 アスピリン腸溶錠 100 mg1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
 ラベプラゾールナトリウム錠 5 mg1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
   1 日 1 回 朝食後 28 日分


(処方 ₂ )
 イコサペント酸エチル粒状カプセル 900 mg 1 回 1 包( 1 日 2 包)
   1 日 2 回 朝夕食後 28 日分

 


 問 246(実務)
 泌尿器科から処方された前立腺肥大症治療薬で、上記処方薬との併用で強い血圧
 降下の原因となった可能性があるのはどれか。1つ選べ。


 1 ナフトピジル
 2 デュタステリド
 3 アリルエストレノール
 4 セルニチンポーレンエキス
 5 ビカルタミド

 

 

  正解;1

 1 ナフトピジル           α₁受容体遮断薬(フリバス
 2 デュタステリド          5α還元酵素阻害薬(アボルブ)
 3 アリルエストレノール       合成黄体ホルモン製剤(パーセリン)
 4 セルニチンポーレンエキス     (セルニルトン
 5 ビカルタミド           抗アンドロゲン薬(カソデックス)

 

 


 問 247(薬理)
 この患者で立ちくらみの原因となった薬の作用点はどれか。2つ選べ。


 1 アドレナリン α₁ 受容体
 2 アンギオテンシンⅡAT₁ 受容体
 3 H⁺,K⁺‐ATPase
 4 シクロオキシゲナーゼ
 5 アンドロゲン受容体

 

  正解;1 2

 

 

 

 

 【第104回薬剤師国家試験」

 問 314−315 

 58 歳男性。健康診断で血圧が高いことを指摘されて近医を受診し、下記の薬剤が処方された。日常的に車を使用し、ほとんど運動の習慣はない。また、長年の喫煙習慣があり、塩辛いものを好む。服薬指導時に「特に気になる症状もないし、副作用が怖いので、薬は飲まないでおこうと思っている。」と薬剤師に話をしていた。

 BMI は ₃₂、診察室血圧は ₁₅₆/₁₀₁ mmHg、家庭血圧は ₁₅₂/₉₆ mmHg であった。

 


(処方)
 アムロジピン錠  5mg  1 回 1 錠( 1 日1 錠)
  1 日 1 回 朝食後 14日分


 問 314(実務)
この患者に対する服薬指導を行う際に、薬剤師が知っておくべきこととして正し
いのはどれか。1つ選べ。


 1 高血圧の診断には、診察室血圧に加え、家庭血圧を測定することが重要だが、
   両者の値が異なる場合は診察室血圧を優先する。
 2 禁煙は精神的ストレスの原因になるので、高血圧患者に対する禁煙指導は避け
   た方が良い。
 3 降圧薬の服用により血圧がうまくコントロールできた場合、生活習慣の改善は
   必要ない。
 4 降圧目標は、年齢や合併症の有無に応じて決められる。
 5 減塩目標は、食塩 10 g/日未満である。

 

 

  正解;4

 高血圧の診断には家庭血圧の数値が重要である。白衣高血圧や仮面高血圧に注意して普段の血圧の数値を重要視する傾向がある。

 高血圧治療は、内服薬による治療と共に生活習慣の改善が重要であるため、生活習慣病の一つになっています。減塩に関しては、日本高血圧学会では1日6g未満を推奨しています。

 

 

 


 問 315(法規・制度・倫理)
この患者は、「薬を飲まないでおこうと思っている。」という発言からも、行動変容ステージの無関心期(前熟考期)にいると考えられる。この患者を関心期(熟考期)へと促していく働きかけとして適切なのはどれか。2つ選べ。


 1 患者の反応にかかわらず一方的に服薬指導や生活指導を行う。
 2 健康行動の必要性や有効性について情報を提供する。
 3 患者に健康行動実施の宣言をしてもらう。
 4 患者の服薬に対する考えや感情(解釈モデル)を聞く。
 5 主治医に連絡し、患者を説得してもらう。

 

 

  正解;2 4

 行動変容ステージは5つの期(ステージ)が設定されており、時間が経過するとともに患者自身に起こるとされている「変化の過程(変化プロセス)」を順に抽出するとともに、それらが有機的に統合されて、「変化の時間軸」すなわち、時間とともに変化する人間が立つ達成段階(ステージ)を客観的に想定することで、それぞれのステージに立つ患者(人間性)に対してもっとも効果的な介入を行うことであり、次のステージへと導き共に進んでいく、という技法だと考えられる。


Precontemplation(前熟考期)

6ヶ月以内に行動変化を考えていない。
始めるつもりはない、できない。
・抵抗がある
・認識していない
・意欲がない
・意気阻喪
・考えたくない



Contemplation(熟考期)

6ヶ月以内に行動変化を考えている。
始めるつもりだが、迷っている。
・遅らせる
・迷っている
・ わかっているが準備ができていない。



Preparation(準備期)

1ヶ月以内に行動変化を考えている。
すぐに始めるつもりがある。
・少し始めている
・始めるつもりがある
・基準に達していない

 


Action(行動期)

行動変化を起こして6ヶ月以内。
始めている。

ただし6ヶ月以内。
・基準とする行動が始まっている
・エネルギーを投入している
・後戻りが最も多い



Maintenance(維持期)

行動変化を起こして6ヶ月を越える。
始めている。

6ヶ月を超えている。
・新しい行動の安定化
・自信大
・再発を防ぐ