46日目 代表的な8疾患と国家試験
46日目 第10週1日目
薬局実務実習も残すところあと2週間となりました。
薬局実務実習も終盤となりますので、残りの10日間はタイムスケジュールやチェックポイントSBOsは特にありません。
それぞれの薬局の日々の業務の流れにのって、
「処方箋の受付」
「医薬品の調剤」
「監査」
「疑義照会」
「服薬指導」「お薬の相談」
を、他のスタッフと協力・連携してスムーズに実施できることを目指します。
より多くの患者様、症例を体験してもらい実習生の能力の「質」の向上を目指していきましょう。
特に、「代表的な8疾患」を意識して服薬カウンセリングを担当してもらい服用中の体調の変化や副作用の発現の有無などを確認することで、薬剤師にはどのような知識・技能・態度が必要なのかを学んでいただくようにしていけるといいですね。
実習生の能力の質は「パフォーマンス」をみて評価をしますので、定期的に概略評価表に「パフォーマンス」を照らし合わせてどの段階に実習生の能力が到達しているかを確認していきましょう。
実務実習が終了するときには、STEP3のレベルに到達していることを目指します。
【STEP3抜粋】
A 医薬品の調製
複雑な処方箋であっても再現性よく、スムーズかつ
正確な調剤ができている。
個々の患者の病状や状態を確認し、調剤上の工夫を
提案できている。
また、薬局で使用されている全ての医薬品を適切な
手順で記録し、保管ができる。
B 処方監査・医療安全
収集した患者情報(面談・薬歴・お薬手帳等)から
得られた情報と薬学的知見を統合して処方内容の
監査ができている。
必要に応じて、自らの判断で多職種に情報提供が
できている。
インシデント事例発生後の対応について考察できている。
C 服薬指導
過去の記録、最新の医薬品情報および患者との面談
から得た情報を基に指導に必要な項目を抽出・分析
し、服薬指導時に活用できている。
D 薬物療法の実践
薬歴や服薬指導を通して、薬物療法の効果を評価し
問題点(副作用など)を発見・抽出し、対応策の
提案を実践できている。
また、それらの内容を他の薬剤師と共有するための
記録が適切に実施できている。
「C 服薬指導」や「D 薬物療法の実践」能力に関しては、どのレベルの知識を習得していればSTEP3に到達しているのか、また実習生にどのレベルの知識を求めるべきなのかを過去の国家試験の問題を疾患ごとに分類して掲載しておきますので参考にしてください。
【がんと国家試験】
【第101回薬剤師国家試験】
問252-253
45歳女性。卵巣がん。がん性疼痛に対して以下の薬剤を使用してきたが、疼痛が増強してきたので、追加処方を検討することにした。
(処方)
ロキソプロフェン Na錠 60mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分
問 252(実務)
ロキソプロフェン Na錠に追加する薬剤として適切なのはどれか。 2つ選べ。
1 コデインリン酸塩散 10%
2 セレコキシブ錠
3 モルヒネ硫酸塩水和物徐放錠
4 メサドン塩酸塩錠
正解;1 3
メサドン塩酸塩錠は適応が、「他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な疾患における鎮痛」となっているため不適である。
強オピオイド;モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、ペンタゾシン
ブプレノルフィン
問 253(薬理)
前問で適切と考えた追加処方薬の薬理作用(副作用を含む)として、正しいのは
どれか。 2つ選べ。
1 中脳や延髄に作用し、脊髄への下行性抑制系神経を抑制することで鎮痛作用を
示す。
2 プロスタグランジンの産生を抑制し、解熱作用を示す。
3 肝臓の薬物代謝酵素によってモルヒネに変換されて鎮痛作用を示す。
4 延髄の化学受容器引き金帯(CTZ)を抑制し、制吐作用を示す。
5 消化管運動を抑制し、便秘を起こす。
正解;3 5
1 オピオイドは、下行性抑制系神経を活性化して鎮痛効果を示す。
2 セレコキシブ、ロキソプロフェンの作用機序
3 コデインの説明として適している。
4 オピオイドは延髄の化学受容器引き金帯(CTZ)を刺激し、催吐作用を示す。
5 オピオイドの説明として適している。
【第103回薬剤師国家試験】
問 238−239
40 歳女性。身長 156 cm。体重 65 kg。会社を経営し、ストレスを感じている。食生活も不規則で、運動もほとんどしない。最近、急に便秘がひどくなり、お腹が張るようになった。両親とも大腸がんで亡くなっていることから心配になり、相談のため薬局を訪れた。
問 238(実務)
大腸がんの検査について薬剤師が行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 年齢を考慮すると定期的な検査が必要です。
2 大腸がんの検査では、通常、まず遺伝子診断が行われます。
3 早期の大腸がんは症状がなく、早期発見には便潜血検査が有効です。
4 大腸内視鏡検査では、結腸は調べられますが、直腸は調べられません。
5 大腸がんの血液検査では、腫瘍マーカーとして、AFP(a₋フェトプロテイン)
を調べます。
正解;1 3
大腸がんは、40歳から罹患率が上昇し50代で加速し高齢になるほど多くなる
と言われているので定期的な検査が必要です。日本人では、S状結腸や直腸に
発症しやすい。
AFPは、肝臓がんの腫瘍マーカー
大腸がんの腫瘍マーカーは、CEA、CA19-9、p53抗体です。
腫瘍マーカーの結果だけではがんの有無を診断することはできません。
通常は、手術後の再発のチェックや薬物療法の効果判定の補助に用います。
問 239(衛生)
大腸がんの発症リスクに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 親や兄弟などに大腸がんの人がいる場合、発症リスクが高い。
2 肥満は、発症リスクを上げる。
3 ベーコンなどの加工肉の摂取は、発症リスクを下げる。
4 魚由来の不飽和脂肪酸の摂取は、発症リスクを上げる。
5 運動習慣の有無は、発症リスクに影響しない。
正解;1 2
大腸がんは、遺伝的素因があり近親者に既往歴があると発症リスクは高いと言われています。ベーコンなどの加工食肉の摂取は発症リスクを上げます。逆に魚由来の不飽和脂肪酸の摂取や適度な運動は発症リスクを下げます。
【第102回薬剤師国家試験】
問332 73歳女性。再発非小細胞肺がんのため、ゲフィチニブ錠 250mg を1日1回服用していたが、軽度の肝機能低下(AST 90U/L、ALT 63U/L、ALP 255U/L)
が現れたため処方1が処方された。
3週間後、血清カリウム値が 3.2mEq/Lとなったため処方2が追加された。
1ヶ月経っても血清カリウム値が 3.1mEq/Lのままであるうえ、血圧が 163/91mmHg となったため、処方3が追加された。
現在では、処方1~3すべてを服用している。
(処方1)
グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・DL-メチオニン配合錠
1回2錠(1日6錠)
1日3回 朝昼夕食後
(処方2)
塩化カリウム徐放錠 600mg 1回2錠(1日4錠)
1日2回 朝夕食後
(処方3)
オルメサルタン メドキソミル錠 20mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後
女性が、だるくてむくみがあるといって、かかりつけ薬局を訪れた。薬剤師は、処
方医に対して以下のような提案をした。提案として最も優先順位が高いのはどれ
か。1 つ選べ。
1 グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・DL-メチオニン配合錠の服用中
止を提案する。
2 塩化カリウム徐放錠の服用中止を提案する。
3 オルメサルタン メドキソミル錠の服用中止を提案する。
4 スピロノラクトンの追加を提案する。
5 フロセミドの追加を提案する。
正解;1
本症例は、グリチルリチンによる偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、四肢の筋力低下、浮腫、体重増加など)が現れていると考えられる。