sikkouyakuin1118’s blog

薬局実務実習の進め方2019

薬学実務実習で意識する代表的8疾患

代表的な8疾患とは。

  実務実習で意識したい代表的8疾患は以下に示すものである。

 

  がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、

          精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症

 

 指導薬剤師にとっては、特に難しいものではありませんが一つ一つ簡単にまとめてみましょう。

 

 

 【がん】悪性新生物

 日本人のおよそ3人に一人が死亡する原因疾患であり、他の疾患と比べても死亡原因第1位の疾患である。年間で見ると約35万人ががんで亡くなっています。男女別にみると男性の1位は肺がんで女性の1位は大腸がんとなっています。男性は2位以下が胃、大腸、肝臓、膵臓が続き、女性は同じく肺、胃、膵臓、乳房が続きます。

 治療方法は、外科的治療(手術)、薬物治療、放射線治療など様々ありますが、薬局実務実習で薬学生が経験するのは薬物治療になります。

 

 「疾患例示」

 

  白血病

   急性骨髄性白血病

   慢性骨髄性白血病

   急性リンパ性白血病

   慢性リンパ性白血病

   成人T細胞白血病(ALT)

  悪性リンパ腫

  多発性骨髄腫

  骨肉腫

  消化器系の悪性腫瘍

   胃がん

   食道がん

   肝臓がん

   大腸がん

   胆のうがん、胆管がん

   膵臓がん

  肺がん

  頭頸部及び感覚器の悪性腫瘍

   脳腫瘍

   網膜芽細胞腫

   咽頭がん

   喉頭がん

   鼻腔・副鼻腔がん

   口腔内の悪性腫瘍

  生殖器の悪性腫瘍

   腎臓がん

   膀胱がん

  乳がん

  皮膚がん

  

 【高血圧症】

 厚生労働省の調査によると、高血圧症患者数はおよそ1000万人以上と言われており高血圧治療薬の年間の市場規模はおよそ1兆8000億円に達すると言われています。生活習慣病といわれる疾患で、糖尿病、脂質異常症、肥満と合わせて「死の4重奏」といわれる。治療方法は、運動療法、食事療法、薬物療法が考えられるがまずは食事療法、運動療法を優先的に選択し、改善が見られない場合は薬物療法を考慮する。

病態により、本態性高血圧症と2次性高血圧症に分類され薬物治療には多くの薬剤が使用されている疾患である。高血圧治療ガイドラインが定期的に専門機関より公表されるので、それに乗っ取って治療することになる。薬物治療の代表的な薬剤(第一選択薬)は、カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害剤、利尿薬があります。単剤、併用で効果が見られない場合は、β遮断薬、α1遮断薬、直接的レニン阻害薬、選択的アルドステロン拮抗薬、血管拡張薬を選択薬とする。

 

 「疾患例示」

 

  高血圧症  

   本態性高血圧症

   二次性高血圧症(腎性高血圧症など)

  肺高血圧症

 

 【糖尿病】

糖尿病も高血圧症同様、推定患者数は1000万人以上といわれており、市場規模もおよそ年間で1兆2000億円と推測されている代表的な生活習慣病である。Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病に分類されるが日本人の95%以上がⅡ型糖尿病と言われている。

Ⅰ型糖尿病では、インスリン注射が必須であるがⅡ型糖尿病にはそれ以外の薬物治療としてSU薬、ビグアナイド薬、αグルコシターゼ阻害薬、チアゾリジン薬、インスリン分泌促進薬、DPP-4阻害薬、選択的SGLT2阻害薬などがある。代表的な副作用である低血糖が出現しないように治療中は注意深く経過を観察する必要があります。

 

 「疾患例示」

 

  糖尿病

   1型糖尿病

   2型糖尿病

   妊娠糖尿病

 

【心疾患】

虚血性心疾患(心筋梗塞狭心症)、不整脈、弁膜症、など心臓疾患に関する治療薬が処方されている患者様の処方監査、調剤、服薬指導に関わっていただく。

心臓は1分間に約70回、1日で約10万回も収縮と拡張を繰り返して全身に血液を送り続ける臓器である。その心臓を取り巻く冠動脈は心臓に酸素や栄養を供給する大切な血管でありその血管が何らかの原因でつまったり、狭くなってしまい供給が低下した状態を虚血性心疾患といい心筋梗塞狭心症がその代表である。

 

 「疾患例示」

 

  不整脈

   上室性期外収縮(PAC)

   心室性期外収縮(PVC)

   心房細動(Af)

   心房粗動(AF)

   発作性上室頻脈(PSVT)

   WPW症候群

   心室頻拍(VT)

   心室細動(Vf)

   房室ブロック

   QT延長

  洞不全症候群

  急性心不全

  慢性心不全

  うっ血性心不全  

  左室不全

  虚血性心疾患

   狭心症

   心筋梗塞

  心筋症

  心筋炎

  心膜炎

  慢性リウマチ性心疾患

  弁(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、大静脈弁)の閉塞

  閉塞性動脈硬化症(ASO)

  心原性ショック

  弁膜症

  先天性心疾患

 

 

【脳血管障害】

悪性新生物(がん)、心疾患に次ぎ日本人の死亡原因の第3位となる疾患で最も寝たきりの原因になる疾患です。

脳血管障害には、虚血性脳血管障害と出血性脳血管障害があり、前者が脳梗塞と一過性脳虚血性発作、後者が脳内出血とクモ膜下出血に大きく分類されます。

薬局に来局される患者様で想定されるのは、脳梗塞後遺症の患者様や入院治療後に予防治療で抗血栓薬などを服用している患者様という事になります。

**キーワード;脳梗塞脳出血、脳動脈瘤クモ膜下出血、もやもや病など**

 

 「疾患例示」

 

  脳内出血

  硬膜下出血

  クモ膜下出血

  脳梗塞

   脳血栓症

   脳塞栓症

  一過性脳虚血発作

  無症候性脳梗塞

  脳実質外動脈閉塞及び狭窄

 

 

【精神神経疾患】

 

【免疫・アレルギー疾患】

免疫疾患といってすぐに思い浮かぶのは、関節リウマチや膠原病といった自己免疫疾患だと思います。そのほか、全身性エリトマトーデス(SLE)、多発性筋炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、サルコイドーシス、クローン病などの疾患の患者様も薬局に処方箋を持参して来局されると思われますので薬学生に経験していただく疾患だと考えられます。

アレルギー疾患に関しては、花粉症やアレルギー性皮膚疾患、気管支喘息など多様な疾患が含まれます。これらの疾患は、長期にわたり症状をコントロールする必要があり、また場合によっては生命にかかわる可能性(アナフィラキシー)もあるので細心の注意が必要な疾患であることを薬学生にも理解させることが重要です。食物アレルギーなども含めると日本人の2人に1人は何らかのアレルギーに関与していると言われており、年々増加傾向にあるようです。

 

 「疾患例示」

  

  アトピー性皮膚炎

  蕁麻疹

  接触性皮膚炎

  アレルギー性鼻炎

  アレルギー性結膜炎

  花粉症

  消化管アレルギー

  気管支喘息

  薬物アレルギー

   スティーブンジョンソン(Stevens-Johnson)症候群

   中毒性表皮壊死症

   薬剤性過敏症症候群

   薬疹

  アナフィラキシーショック

  尋常性乾癬

  水疱症

  光線過敏症

  ベーチェット病

  臓器特異的自己免疫疾患

   バセドウ病

   橋本病

   悪性貧血

   アジソン病

   重症筋無力症

   多発性硬化症

   特発性血小板減少性紫斑病

   自己免疫性溶血性貧血

   シェーグレン症候群

  全身性自己免疫疾患

   全身性エリテマトーデス

   強皮症

   多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)

   関節リウマチ

  臓器移植(腎臓、肝臓、骨髄、臍帯血、輸血)における、拒絶反応

                        および移植片対宿主病(GVHD

 

感染症

感染症という単語だけでイメージすると非常に範囲が広く疾患名もたくさんイメージできる疾患ですが、薬局で遭遇する感染症と考えると、抗菌薬(肺炎など)や抗ウイルス薬(インフルエンザ、水痘)が処方されている患者様がメインになってくると考えます。季節によって流行するプール熱咽頭結膜熱)や手足口病ヘルパンギーナ、などもイメージできます。また、「感染症情報センター」で検索すると全数把握対象疾患や定点把握対象疾患として様々な疾患が検索できますので参考にしてください。

 

  「疾患例示」

 

  細菌感染症

   呼吸器感染症

   消化器感染症

   感覚器感染症

   尿路感染症

   性感染症

   脳炎

   髄膜炎

   皮膚細菌感染症

   感染性心膜炎

   胸膜炎

   耐性菌による院内感染

   全身性細菌感染症 

    ジフテリア

    劇症型A群β溶血性連鎖球菌感染症

    新生B群連鎖球菌感染症

    破傷風

    敗血症

  ウイルス感染症およびプリオン病  

   ヘルペスウイルス感染症

   サイトメガロウイルス感染症

   インフルエンザ

   ウイルス性肝炎

   HIV感染症

   後天性免疫不全症候群

   伝染性紅斑(リンゴ病

   手足口病

   伝染性単核球症

   突発性発疹

   咽頭結膜熱

   ウイルス性下痢症

   麻疹

   風疹

   流行性耳下腺炎

   風邪症候群

   クロイツフェルトーヤコブ

  真菌感染症

   皮膚真菌症

   カンジタ症

   ニューモシスチス肺炎

   肺アスペルギルス症

   クリプトコックス症

  原虫・寄生虫感染症

   マラリア

   トキソプラズマ

   トリコモナス症

   アメーバ赤痢

   寄生虫感染症

    回虫症

    蟻虫症

    アニサキス

 

 以上が、薬学実務実習で意識したい代表的な8疾患です。

 

 調剤薬局でもよくみられる疾患ですので、意識的に薬学生に取り組んでもらえるとより良い実務実習になるでしょう。もし、薬局で経験できない疾患があるようでしたら、実務実習は今年から薬局→病院の順番で実施されますので連携ノートなどでその旨を連絡して病院で経験できるように連携していきましょう。